自筆証書遺言保管制度の活用法について


皆様初めまして、弁護士法人心所属の弁護士の林唯です。

私は、事務所内で相続分野を専門的に担当する弁護士として活動しております。
 
このブログでは、相続分野の法的な制度や、権利等について解説していきますので、宜しくお願いいたします。

本日のテーマは、「自筆証書遺言保管制度の活用法について」です。

自筆証書遺言を作成した際、自宅に遺言書を保管しておくことで、遺言書が無くなってしまうことがあるのではないかという心配をなされる方がいらっしゃいます。
  
その際に、活用できるのが「法務局」に自筆証書遺言を保管できる制度です。

この制度では、法務局に自筆証書遺言を預ける際に、一人の人物を指定して、自身の死亡届が提出された際に指定した人に通知が行くように設定することができます(これを「指定者通知」とよびます。)。

この指定者通知には、さまざまな活用法があります。

例えば、2人の息子がいて、自身の相続人となる場合について考えてみましょう。

この内、一人(以下「A」)が重度の難病にかかっており、遺産を残して面倒を見てほしいが、もう一人の相続人(以下「B」)が遺産を散財する可能性があるとしましょう。

このような場合に、一つの解決策として、遺言執行者を弁護士等の第三者に指定して、指定者通知をその弁護士に指定しておくことで対策をとることができます。

実際に、遺言者様がお亡くなりになった際に、死亡届が役所に提出された段階で、役所から法務局に対して遺言者様死亡の報告がなされます。

そうすると、法務局は弁護士等に対して指定者通知を行うことになるので、弁護士等はすぐさま遺言執行者として口座の凍結、分配を開始することができます

この方法によって、Bの散財を防ぐのと同時に、Aに必要な財産の確保を行う事ができるわけです。

その後、遺言執行者となった弁護士等は、遺言者様が後見人や訪問医療サービス等の事前に契約しておいた会社に対して、Aさんの看護を委託して任務を終了させることができます。

 

この例からわかる通り、相続人の中に不安な行動をとる恐れがある方がおり、かつ、他の相続人ではそれに対処できる可能性が低い場合には、「法務局」による「指定者通知」の制度をうまく活用することができます。

なお、公正証書遺言にはこのような通知の制度がないことから、「指定者通知」が法務局における遺言書保管の特徴的なメリットと考えてもいいでしょう。

以上が、「自筆証書遺言保管制度の活用法について」です。

それでは、次回のブログでまたお会いしましょう。

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