成年後見人の選任申し立てと鑑定手続き
寒暖差の激しい季節が続きますが、どのようにお過ごしでしょうか。
お久しぶりです、弁護士の林です。
本日は、成年後見人の申し立て手続きとその注意点について話していきたいと思います。
1 成年後見人の申し立て手続きの全体像
成年後見人の申立て手続きの全体像は以下のとおりです。
①申請書類の提出
②即日面接
③鑑定
④親族への意向確認
⑤選任
これらの手続きの中でも、慎重に対応しなければならない点は、①申請書類の提出で添付する医師の診断書③鑑定手続きです。
2 ③鑑定
成年後見人の申し立てを行う際、裁判所は成年後見人を必要とする方の認知能力等の状態を確認する手続きとして、「鑑定」を行う事が認められています。
この鑑定の結論によっては、後見ではなく、保佐人や補助人が選任される可能性があります。
保佐人や補助人は成年後見人よりも権限が狭いため、包括的にサポートを行いたいのであれば、成年後見人の選任を目指すのが合理的といえます。
そのため、成年後見人を選任してもらう確率を高くする方法を考える必要があるのです。
その方法の一つとして、医師の診断書を詳しく書いてもらい、鑑定手続きの省略を目指す方法があります。
以下、医師の診断書の作成について詳述します。
3 ① 医師の診断書
申請書類で医師の診断書が要求される趣旨は、成年後見人を必要とする方の判断能力を確認するための資料にする点にあります。
そのため、この医師の診断書に記載されている内容によっては、上記③鑑定手続きを省略する事ができる場合があるのです。
では、③鑑定手続きを省略できる診断書とは、どのような診断書なのでしょうか。
それは、「明らかに鑑定の必要がないと認められる」内容を含んだ診断書を指します。
具体的には、診断書の病名が、
①脳血管性認知症
②アルツハイマー型認知症
③遷延性意識障害(いわゆる植物状態)
④重度の知的障害
⑤脳出血後遺症
⑥脳梗塞後遺症
等に該当する場合には、「明らかに鑑定の必要がないと認められるとき」に該当するとされる事が多いようです。
さらに、その病名を診断するにあたって、長谷川式認知症スケールやMMSE等の、定型的な審査項目を記載していくタイプの診断書を添付すれば鑑定省略される可能性が高まります。
以上の事から、主治医に診断書の記載をお願いする際に、判断が難しい項目について、多少重めに記載してもらえるよう頼む事が合理的ですので、忘れずに伝えておきましょう。
4 まとめ
今回は成年後見に関して、医師の診断書と鑑定の省略について、確実に成年後見人を選任してもらうには、
① 鑑定の省略を狙う
② 鑑定の省略には医師の診断書の記載に注意する必要がある
この2点に注力する必要があることを書きました。
5 おわりに
寒暖差が激しい日が続きますが、皆様体調にお気をつけてお過ごしください。